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在校生論文顕彰表彰式 (R2.2.27) 〜最優秀作品掲載〜

 令和2年2月27日、体育館において、第30回論文顕彰事業入賞者の表彰式が行われました。
 本事業は、半田高校卒業30周年記念事業として、平成2年度から始まり、今年度で30回目を迎えることとなりました。半田高校の卒業生に支えられる伝統的な事業の一つとなっています。
 この事業の主体は、柊会、PTA、卒業30周年同窓生有志の皆さんですが、半田高校第41回生を中心に実行委員会が組織されました。
 今年度のテーマについては、多くの同窓生が参加型で関われるようにテーマを公募したところ、13件の応募がありました。その中からを「令和元年 私をとりまく『もの・こと・ひと』を考える
〜未来に向けて 私のアントレプレナーシップ〜」に決定し、1,2年生全員と3年生の希望者に応募の呼びかけをしました。
 締め切り日を令和元年12月13日とし、560編(1年生287編、2年生269編、3年生4編)の応募がありました。今年度の560編を合わせると、この30年間に6,574編の論文が書かれたことになります。
 12月15日に予備審査を行い、これに基づいて令和2年1月26日に本審査を行いました。本審査では、予備審査で残った24編を審査委員全員が再度1編ずつ読み総合的に評価し、上位者を選びました。その中から厳正な審査の結果、以下のように入賞作品を決定し、同年2月6日に論文顕彰選考委員会(柊会役員、PTA役員、学校)で了承を得ました。
 令和2年2月27日に開催された入賞者発表・表彰式においては、第41回生代表岩橋雅高氏から賞状及び賞品が授与されました。また、その他の応募者全員に参加賞が贈られました。
 今回の顕彰事業を担当された半田高校第41回生の皆さんを始め、ご尽力いただいた多くの方々に心から感謝申し上げます。

 1令和2年度のテーマ
   「令和元年 私をとりまく『もの・こと・ひと』を考える〜未来に向けて 私のアントレプレナーシップ〜」

 2応募総数 560編

 2入賞作品
       最優秀賞 「未来は私たちの手に」
        優秀賞 「外国人との共存・共栄」
        〃   「令和 和と輪」
        〃   「つくる責任とつかう責任」
        佳作  「貧困解決のために」
        〃   「周りに溢れる『違い』」
        〃   「少数派の意見が課題解決へ」
        〃   「平等な社会に向けて」
        〃   「『主体性・積極性』生産論」
        特別賞 「デジタル化と私たち」

講評
 論文顕彰を終えて(半田高校第41回生 論文顕彰事業担当者一同)

 今回、記念すべき30回の節目を迎える論文顕彰事業において、過去最高の560編の応募をいただき、大変ありがとうございました。
 今回のテーマは、「令和元年 私をとりまく『もの・こと・ひと』を考える〜未来に向けて 私のアントレプレナーシップ〜」です。多様性や共生など様々な価値観が求められる中、自分を取り巻く家族、地域、社会、自然、経済、環境などに対して、どのような意識をもっているか?そして、身の回りの課題解決から、日本や世界の課題解決へと、新たな時代の幕開けに、未来に向けて何に挑戦し、どう行動しよと考えてるのか?期待と願いを込め、このテーマに決めました。
 また、論文顕彰事業の趣旨に立ち返り、敢えて「論文」の形にこだわり、書き方を「序論、本論、結論」の三部構成とするよう要領を見直しました。IT化やコミュニケーションスキルの低下が進む中、この事業を通じて、言語化する難しさや大切さを学び、「論文」という苦手意識を少しでも払拭し、深い思考や書く力を養う機会につながれば、との思いを込めています。
 予備審査、本審査とたくさんの作品を読ませていただき、私たちが想像していたよりも多様なテーマで、未来をまっすぐに見つめる感受性豊かな半高生に出会うことができ、感動しました。論文を通じて、私たちも日常の家庭や仕事を忘れ、同じ半田高校に通った頃にタイムスリップした気分で、作品一つ一つにコメントを記載し、おかげて多くの元気や希望をいただくことができました。
 平成元年度の半高卒業生である私たちが、元号が変わる歴史的なタイミングで、令和元年度の在校生の皆さんと論文を通じて対話することができました「縁」をうれしく思います。また、私たち41回生はこの論文顕彰事業を在学中に経験していない最後の世代でもありましたが、事業を立ち上げた12回生をはじめ諸先輩方の想いや誇り、そして現在の半高生への期待を、次の42回生へ、30年間の時を経て、バトンを「繋ぐ」ことに関われたことに感謝します。ありがとうございました。
(榊原正彦)
 (柊陵第63号第30回在校生論文顕彰事業講評より)

最優秀賞

未来は私たちの手に  1年5組 松林聖音

 2015年9月の国連サミットで、持続可能な社会を実現するための目標SDGsが採択されてから、4年の年月が過ぎようとしています。この間、SDGsに対する様々な広報活動や啓発活動が行われ、学校で学ぶ機会も幾度かありました。
 その中で私が知ったSDGsの共通理念である「leave no one behind」。目標とする持続可能な社会から「誰も置き去りにしない」「だれ一人残さない」、と訳されるその言葉を初めて耳にしたとき、私はとても心強い気持ちになりました。まるで、「この地球のすべての人は、だれも見捨てることなく救います」と、言われているような気がしたからです。同時に、「困ったら誰かが救ってくれるだろう、問題が起こっても誰かが解決してくれるだろう」、つまり「自分じゃなくても誰かが動いてくれるだろう」、そんなどこか他人事のような印象も持ちました。
 そんな私の意識を変えてくれたのは、家族で訪れたグレートバリアリーフに浮かぶ無人島で出逢った一人の海洋学者でした。ウミガメの産卵地にもなっているその無人島は、特別海洋保護区域に指定されており、トイレや売店、ロッカーなどの人工施設はもちろん、船をつける桟橋すらありませんでした。船で近づいた後は、定員が数人ほどの手漕ぎボートに乗り換え、ようやく上陸することができました。一日に上陸できる人数も時間も厳しく制限されており、島に持ち込んだものは一つ残らず回収して帰らなければならず、水質汚染防止のため、日焼け止めを使用して海に入ることすら禁止されました。
 島へ向かう船の中では、地元のガイドや海洋学者により、その島の美しい自然の紹介とともに、環境保全についての説明が何度も繰り返されました。「私たちは美しい自然を大切に守っていこうとしています。そんな私たちの気持ちを、たくさんの人に知ってほしいです。」そんな思いがひしひしと伝わってきました。
 いざ島に上陸すると、そこには想像を絶する大自然。耳を澄ませば聞こえてくるのは波の音と風の音と鳥の鳴き声のみ。海に潜れば、一面に広がる様々な形や色の珊瑚の群生。そして、腕を伸ばせば触れそうな距離に悠々と泳ぐウミガメ。まるで地球とは違う星に降り立ったような雰囲気や、人間生活と隔離されたような静けさに、私は圧倒されました。
 ふと浜辺に目をやると、同乗してきた海洋学者が、両手いっぱいにカラフルな物を抱えてくるのが見えました。(珍しい貝でも集めて私たちに見せてくれるのかな)、そう思いながら近づくと、それは珍しい貝でも植物でも生き物でもありませんでした。私たちが普段の生活で目にするようなゴミでした。
(これほどまでに厳重に守られているはずのこの島に、なぜゴミが?)私たち旅行者が不思議そうな顔をしていると、その人は私たちを島内探索に誘ってくれました。初めて目にする海洋生物や美しい珊瑚の化石、ジャコガイなどに触れながら島を半周ほどしたとき、私は、海岸の様子がそれまでと違ってきていることに気付きました。波と共に押し寄せるカラフルな袋やペットボトル、発砲スチロールの塊。水面を浮遊するそのゴミは、美しい大自然の中でとても異様に映りました。それらは、海流に乗って漂着してくるというゴミでした。そして、毎日島を何往復もして大量のゴミを回収しても、次の日にはまた別のゴミが漂着している、という現実を知りました。
 世界中でプラスチックごみだけでも年間800万トンが、ポイ捨てや不法投棄によって海に流出しているという現状。そんな中、その人がいくら毎日ゴミを回収したところで、問題解決には程遠く、一見無駄な努力のように思えるかもしれません。でも、それは違います。あの日あの場所で海洋学者の行動に触れた私たち旅行者は、誰もがその人の思いを受け止め、「自分も何かしなくては」「他人事ではない」という気持ちに駆られたはずだからです。私も、より環境保全に興味を持つようになり、川や海を浄化する活動(EMダンゴ作りなど)に参加するようにもなりました。その人の行動は、決してちっぽけでも無駄でもなく、周りの人たちの意識を変える大きな力を持っていたと言えると思います。
 そしてこの夏、夏休みの課題である新聞切り抜きコンクールの題材に「海洋汚染」を選んだ私は、ある記事を目にし、とても嬉しくなりました。それは、2017年にグレートバリアリーフでは、地元海洋学者の呼びかけにより「ラストストロー オン グレートバリアリーフ」という取り組みが始まり、その後多くの観光業者の賛同によって、百万本以上のストローの不使用を達成している、という内容でした。「一人の力は小さく見えても、諦めることなく行動し続ければ、多くの人の意識を変え、世界をも動かすことができる」無人島で出逢った海洋学者が、私にそう教えてくれているような気がしました。
「leave no one behind」持続可能な社会から誰一人置き去りにしないという世界。そんな世界の実現なんて、初めから無理だと考えている人もいるでしょう。「自分だけがやっても」「自分がやらなくても」と言い訳する人もいるでしょう。この言葉を初めて聞いたときに「自分じゃなくても誰かが動いてくれるだろう」、そんな印象を持った私もその一人でした。でも、初めから諦めて一歩も踏み出さなければ何も変わりません。どんな小さな一歩でも、結局その一歩を踏み出さなければ、ゴールに近づくことはできないのです。
 解決するべき問題は、この地球上に山積しています。SDGsの目標達成は2030年。その時、私たちの周り、日本、そして地球はどうなっているのでしょう。SDGsは全ての国と人のためのものであり、その未来を変えていけるのは、今の私たちしかいないと思います。取り残された人や課題に目を向け、「誰かじゃなく自分が動く」「何かしよう」「これは自分の課題」と言える人が増えたなら、きっと「誰一人取り残されない世界」に近づいていくのだと思います。
 未来は私たちの手に委ねられています。「できない、無理だ」とすぐに諦めたり嘆いたりするよりも、解決するために少しでも行動できる人に、私自身変わっていきたいです。



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