令和6年2月29日(木)、半田高校体育館において、第34回論文顕彰事業入賞者の表彰式が行われました。
本事業は、半田高校卒業30周年記念事業として、平成2年度から始まり、今年度で34回目を迎えることとなりました。半田高校の卒業生に支えられる伝統的な事業の一つとなっています。
この事業の主体は、柊会、半田高校、PTA、卒業30周年同窓生有志の皆さんです。今年度は半田高校第45回生を中心に実行委員会が組織されました。テーマは「あなたの第一歩」に決定し、1,2年生全員と3年生の希望者に応募の呼びかけをしました。「実際に自分で行動したことを必ず盛り込むこと」という条件が課されています。
1年生2編、2年生192編、3年生2編、合計196編の応募がありました。令和6年1月21日に半田高校にて本審査が行われました。厳正な審査を経て入賞論文を決定しました。
令和6年2月29日に開催された表彰式においては、第45回生代表青木倫子氏から賞状及び賞品が授与されました。また、その他の応募者全員に参加賞が贈られました。
今回の顕彰事業を担当された半田高校第45回生の皆さんを始め、ご尽力いただいた多くの方々に心から感謝申し上げます。
<第34回在校生論文顕彰事業>
1テーマ 「あなたの第一歩」
2応募総数 196編
3入賞作品
最優秀賞 「住み続けたいまちづくり―学生の私でもできることー」
優秀賞 「地元のためにできること」
「亀崎に古民家カフェ通りを作る」
「わたしの第一歩」
佳作 「アグピー号の問題点と解決案および私の行動」
「りんくう海浜緑地における水質改善活動に関する中間報告」
「声を上げれば、きっと届く」
「今の自分にできる地域への貢献」
「地域のための私の第一歩」
特別賞 「環境問題に向けて個人ができること」
住み続けたいまちづくり ―学生の私でもできること-
「私はSDGsの11番「住み続けられるまちづくりを」に着目し、半田市に人を呼び込むことを目的にクラシティという施設をどうにか利用できないかと考えました。
まず、半田市とクラシティについての説明をします。半田市は総人口117,385人(令和5年8月現在)、愛知県尾張地方にある市です。半田運河や赤レンガ倉庫といったその地を代表するものはあるものの、なかなか若い世代の人たちには刺さらず総人口は減少し続けており(図1)、都市部への人口流出も見られます。私たちのような10代 20代の若い世代が半田市に住みたい、住み続けたいと思うことができるように何か一つ集客を見込める飲食店などがあれば、SNSで発信することで若い世代から広まり半田市の名前が多くの人に届くのではないかと考えました。そこで私が考えたのが、クラシティの活用です。クラシティは知多半田駅から直通の連絡通路があり、複合商業施設、市営駐車場、分譲マンションなどで構成されています。5年前に「食」をテーマにリニューアルされ、現在も日々進化しています。この施設にはカフェや和菓子専門店などが入っており、のちに詳しく述べますが駅や高校も近いことから、ここを集客の場としたいと考えました。
私がこの施設を知ったのは同級生のお母さんが働いていたことがきっかけで、そのつながりを元にクラシティで働く人や半田市役所の職員の方々から話を聞けるよう取り付けていただき、より詳しくクラシティの現状を調査しました。その結果、クラシティでは課題として近くに半田商業高校があるにも関わらず学生の往来が少ない、近くにあった商店街や半田市民病院がなくなり活気がなくなってしまった、クラシティについての情報をうまく広げられず知名度が低いなどの問題があるとわかりました。この事から、情報発信に積極的な若い年代の人(特に学生)にクラシティに立ち寄ってもらいたいと考え、若い世代にアピールするなら若い人の意見を取り入れたものにしたいということで、この施設の一階にある珈琲をメインに販売しているココチヤコーヒーというカフェの方からお声掛けいただき、共同メニューの制作がはじまりました。
そこでまず学生に人気なデザート、飲み物について私や店員さんだけでは偏った意見になる可能性があったので店員さんと質問内容を考え、半田高校の2年生にアンケートを取りました。図2のとおり「買うなら」という質問には7割以上がドリンクと回答しています。高校生のお小遣いは平均5,000円くらいだそうで、その中から趣味などほかにも費やすことを考えると手軽に買える飲み物を選ぶ人が多くなるのかなと感じました。また「頼むなら」という質問には約半分の人がキャラメルフレーバーの生クリームが入ったドリンクと回答しており、これはスターバックスのメニューを想像した人が多かったからではないかと思います。
これらの結果と分析をもとに、9月27日第一回共同メニュー制作会議を行いました。アンケートから共同メニューはドリンクに、ハロウィンが控えていたこともありキモカワ路線でデザイン案を練ってみるなど大まかなことを決定しました。また、「コーヒーが好きか?」という質問では半分ちょっとの人が嫌いもしくは苦手と答え、好きと回答した人でも6割の人がよく飲むのはカフェオレと回答しました。(図3)少し甘いくらいが学生にはあっているのかもしれません。そういったことを参考に、10月13日第二回共同メニュー制作会議をしました。アンケートでは甘いものが好きな人が多かったため甘党をターゲットとし、コーヒー系統のメニュー以外をというテーマの新作がすでに出ていたので甘めのコーヒーもしくはコーヒー牛乳をベースにしたフロートに案を固めました。そして10月24日には会議で決まったことをもとに試作案2つを実際に試しました。
①キャラメルソースとバニラアイス二つ並べるスイーツ
②コーヒーフロート(コーヒー牛乳ベース)
①は溶けてしまったり見栄えが思い通りにならなかったりすることから試作を繰り返すこととし、②の案で何度か試作を重ねました。(図4)さらに商品の値段設定を、アンケート結果をもとに行いました。まず「あなたが飲み物を注文するときに買おうと思える金額はどのくらいか」という質問ではそれぞれ20数パーセントずつくらいの回答で、最も多かったのは400~500円となりました。(図5)そこになるべく値段を近づけつつ、原価などについて店長さんと相談した結果、商品価格は600円に定めました。また「どの媒体で商品を知りますか?」という質問には知人からの口コミと答える人も多くいましたが、25%の人は Instagramを挙げていました。図6はInstagramの国内利用者数を年代ごとに示したものです。最も新しいデータだけでも日本人人口の4分の一が利用していることになります。また商品を購入するときにSNSを参考にしているのは図7のグラフから見ても10代から20代であり、これらのことから彼らに少しでも届けられるようInstagramを活用した宣伝をしたいと考えました。そこで、このメニューの写真をInstagramに投稿した画面を見せると50円返金というサービスをすることになりました。
こうしてできたのが「コーヒーみるくん」です。コーヒー牛乳ベースのフロートで、お目目はクッキーとコーヒー豆チョコでできています。かわいさもおいしさも最大限詰め込みました。昨年11月から一か月ほど期間限定ですが、実際に販売させていただきました。売り上げはまずまずで大盛況とはいえませんでしたが、やりきった達成感はいっぱいでした。
今回私はクラシティ活性化のために若い世代を呼び込もうとココチヤコーヒーさんと共同メニューを制作しました。また、実際に半田高校1年生にアンケートを取ったり、SNSでの影響などを考えてInstagramの活用方法を考えました。反省点は、主に半田市やクラシティの活性化としての解決策をすぐに一つに絞ってしまったこと、容器などにまでこだわりぬくことができなかったこと、ココチヤコーヒーにしかない突出した部分をつくれなかったことです。お声がけいただいたことに夢中になりすぎて、周辺の店舗などまで調べることができなかったのでより多角的な視点でみることができていたらよかったなと思います。ほかにも細かいところで改善点がたくさん見つかったので、これからの活動では視野を狭めないよう今回のことを生かしていきたいと思います。
講 評
論文顕彰を終えて
地域のカフェ、地元の海、古民家、祭り⋯。世の中をよりよくしたいという思いが詰まった、「第一歩」の“足跡“を読ませていただきました。社会に影響を与える大きな一歩、自分自身の成長につながる一歩と、バラエティーに富んでいました。
論文執筆にあたり、ネット情報を集めるだけでは実感できない現実の難しさ、面白さにぶつかってくれたならうれしいです。これに懲りずに、一歩ずつ前進していってください。
今回、審査員として集まった我々45回生の中には、みなさんの「第一歩」に触発され、自分の次の「一歩」をどう踏み出すかを考える人もいました。私たちもいい刺激をいただきました。
ありがとうございました。(尾之内 潤)
(柊陵第67号 第34回在校生論文顕彰事業より)