本事業は、半田高校卒業30周年記念事業として、平成2年度から始まり、今年度で36回目を迎えることとなりました。半田高校の卒業生に支えられる伝統的な事業の一つとなっています。
この事業の主体は、柊会、半田高校、PTA、卒業30周年同窓生有志の皆さんです。今年度は半田高校第47回生を中心に実行委員会が組織されました。テーマは「知多半島と私」に決定し、1、2年生全員と3年生の希望者に応募の呼びかけをしました。
1年生130編、2年生139編、合計269編の応募がありました。令和8年に半田高校にて本審査が行われ、厳正な審査を経て入賞論文を決定しました。入賞者に賞状及び賞品が授与され、その他の応募者全員に参加賞が贈られました。
今回の論文顕彰事業を担当された半田高校第47回生の皆さんを始め、ご尽力いただいた多くの方々に心から感謝申し上げます。このホームページに、最優秀賞作品を掲載させていただきます。
<第36回在校生論文顕彰事業>
1.テーマ 「知多半島と私」
2.応募総数 269編
3.入賞作品
最優秀賞
森田 深羽(2-8) 「近未来型の知多半島とは」
優秀賞
森 陽登(2-2) 「知多半島の持続可能な未来に向けて」
磯貝 柚季(1-8) 「ただいま、と帰ってくる場所を残すために」
北川真里亜(1-8) 「知多半島の魅力と未来」
佳作
杉江 雄登(2-3) 「とこなめ花と陶の庭めぐり ~地域を動かす小さな一歩」
杉山 結愛(2-3) 「私にとっての知多半島」
竹内 海人(2-6) 「知多半島の海と私」
渡邉 翔(1-6) 「知多半島に世界レベル研究施設を」
岸本 幸太(1-8) 「地域との深い連携を」
特別賞
山崎 比呂(1-7) 「故郷の未来を想い、今を生きる」
西里 優花(2-6) 「Local×Global ‐私がつなぐ小さな架け橋‐」
「近未来型の知多半島とは」 2年8組 森田 深羽
『知多半島と私』を論じる前に、私特有の事情で語るべき事があります。それは日本と某国との違いについてです。
私は生まれてから15年間、オーストラリアのメルボルンで暮らして来ました。現地では、授業の三分の一を日本語で学ぶ公立の小学校や週に一日ある日本語学校には通っていましたが、日本の学校に本格的に通ったのは半田高校が初めてです。では、何故半田高校に通う事になったのかと言いますと、「日本の教育の方がオーストラリアのそれより競争力があるから」という父親の強い薦めにより、父の母校である半田高校に特色選抜を利用し入学させて頂きました。
州により多少の違いはありますが、オーストラリアの高校では少なければ4科目、最大でも6科目(必修科目が4つで選択科目が2つ)しか学びません。また、オーストラリアの中学レベルの数学では一切幾何(図形)を扱いません。更に言うと、日本の様な激しい受験競争は基本的に存在しません。日本よりオーストラリアの方が勉強の質や量が低ければ、オーストラリアの教育レベルが日本より下になるのは当然じゃないでしょうか。特に、先日も自然科学の分野で日本人2名の方がノーベル賞を受賞された通り、科学技術の分野では日本はオーストラリアより断然秀でているのは間違いないでしょう。
正直に申し上げますと、半田高校に入学した後、「皆こんなに勉強するのか」と度肝を抜かれました。数学や理科の学習レベルは非常に高く、国語や社会はどうにか食らい付くのに必死でしたが、ようやくそのペースに慣れてきました。手前味噌ですが、勤勉な半田高校生に倣って様々な挑戦をするようになり、先日も英検1級を取得したり、チャーチル杯と言う英語弁論大会の西日本予選で2位を頂いたりする事も出来ました(11月15日が本選になります)。今考えると、「オーストラリアで勉強をし続けていたら、社会人として通用する人間になっていただろうか」と怖くなります。
別の切り口になりますが、『知多半島』を語る上で欠かせないのが、知多半島が『愛知県』の一部という事です。言うまでもなく、愛知県は世界に名立たる『TOYOTA』を中心に『工業』で成り立ってきており、製造品出荷額は46年連続で全国1位を記録しています。近年、愛知県に限らず、日本の製造業は中国に押されっぱなしなのは全く以て否めませんが、良質で価格を抑えた製品を製造するという事に掛けては世界一であると私は確信しています。例えば、オーストラリアでは外国車より燃費が良い上に安価という事で、トヨタを始め、ホンダやマツダ、日産、三菱等の日本車ばかりが街を駆け抜けています。その製造業を引っ張っているのが愛知県なのは言うまでも無いでしょう。
以上を踏まえ、本題に入ります。少子高齢化の進行や労働力の不足、地域経済の衰退等は知多半島特有の問題ではありません。ですので、一般的な解決策を知多半島に当てはめるのではなく、知多半島の特徴を考慮した上でオリジナリティがあるアイデアを述べたいと思います。
2025年9月25日、トヨタは富士山の麓に広がる豊かな自然に囲まれた工業の街である静岡県裾野市にウーブン・シティを始動させました。まだ一般公開されていないので全貌が明らかになっているとは言えませんが、ウーブン・シティはヒト、モノ、情報、そしてエネルギーのモビリティを生み出し、試すテストコースとされています。そしてヒト中心の街・実証実験の街・未完成の街をコンセプトに、幸せの量産を目指すとされています。
ウーブン・シティは静岡県裾野市と言う内陸部で開業しました。知多半島は『半島』が付くだけに海に面しています。であるならば、内陸の次は知多半島に『沿岸部版ウーブン・シティ(仮名:コースタル・ウーブン・シティ)』を着工しない手は無いのではないでしょうか。ここで、沿岸部版ウーブン・シティの構想をいくつか挙げていきたいと思います。
まず知多半島は海に面している事から、水産業を最先端の技術を使ってこれまで以上に発展させていくのはどうでしょうか。農林水産省の外局である水産庁は、漁業・養殖業の生産性の向上や水産物の流通構造の改革等を目指したスマート水産業という取り組みを推奨しています。知多半島で最も漁業が盛んなのは南知多町ですが、消滅可能性自治体の一つに数えられており、将来の漁業の担い手の確保に苦しんでいます。であるならば、スマート水産業のような取り組みに積極的に参画し、多くの人手に頼らないで稼げるような漁業の仕組みのモデルケースになる事で、他の過疎地域にも希望を与える存在になれるのではないでしょうか。
また、海上は陸地と違い、住居が無く人や車が通行している訳ではないので、人身事故のリスクが少ないエリアと考えます。なので、海の上やその空を使って省人化しながら安全に物を輸送する物流システムを導入していければ良いのではないでしょうか。
実際に、国土交通省は小型無人ボートやドローン等を使って人や物を運ぶ『海の次世代モビリティ』を検証すべく、実証実験出来る企業団体を公募しているようです。これに乗らない手は無いと思いませんか。
一個人として考え付く沿岸部版ウーブン・シティの構想案はこれぐらいです。日本は教育レベルが高く、特に科学技術で立国してきたのは疑い様のない事実です。そして、その科学技術立国の中心を担ってきたのが愛知県なのは先に述べた通りです。なので、個人的には沿岸部版ウーブン・シティを開業させる事で、様々な最先端技術が活用され、人々の暮らしはより効率的で快適な物になっていく事と考えています。
ですが、その知多半島で沿岸部版ウーブン・シティに取り掛かるかどうか以前に、技術面以外の障壁は存在しないでしょうか。
物事は何でも表裏一体ですが、外国に居た者として敢えて知多半島に住んでいて良くないと感じる点を挙げるとすると、『変化を拒む』点にあると思います。多くの人が昔からの顔馴染みや地元民とばかりコミュニケーションを取り、先祖代々から伝わる方式を踏襲し、より良くするための変化までも拒否して来ているように感じます。確かに昔からの伝統や文化、慣習は大事にしていきたいと私も考えます。ですが、そこに固執し続ける事で知多半島は理想的な成長曲線を描けて来られたのでしょうか。
沿岸部版ウーブン・シティの構想案に限らず、どんな大きなプロジェクトを知多半島の五市五町で実行しようとしても、より多くの住民がその計画に賛同しない限り、五市五町の首長や議会は行動出来ません。今こそ知多半島の変革のために五市五町で一致団結する時じゃないでしょうか。
ピンチはチャンスと言う通り、知多半島が衰退して来ているこのピンチを、最先端技術を活かした近未来型の街にするチャンスとして活かすかどうかは知多半島の住民の民意次第です。老若男女問わず、『変化を恐れない』マインドが醸成される事を心から願っています。
講 評
論文顕彰を終えて
今回の論文顕彰では、「知多半島と私」というテーマを取り上げました。変化の激しい現代社会において少子高齢化の進行、若者の都市流出、地方の地域経済の衰退などの課題に直面する知多半島をじっくり見つめ、高校生ならではの柔軟な発想で未来の知多半島の姿を論じていただきたいと考えました。どの論文も、高校生が知多半島の現状を真剣かつ冷静に見つめ、分析したことを基に、高校生らしいアイデアを生かした提案が述べられていました。その内容に共感し、あるいは感銘を受けながら、時間を忘れて読み進めました。高校生のリアルな声を聞きくことができ、私たちにとっても知多半島について考える貴重な機会となりました。
今回の事業が、高校生の皆さんや知多半島の未来への貢献につながることを願っています。
万浪 真広
(柊陵第69号 第36回在校生論文顕彰事業より)






















